金村修の言葉 2019年3期

第一回 10月14日
縛り
自分が何を撮ってるのか。言葉を発見するとそれに縛られちゃうんだよね。見てる人は作者が何に縛られてるかわかるんだけど、それが何? と思っちゃうから。


第二回 10月21日
写真
写真はちょっとダサいくらいがカッコいいんですよ。


第三回 10月28日
画面
画面をフォルマリスティックにすると感情が消えるんですよ。


第四回 11月4日
パンダ
動物園のパンダを撮るのっては難しいね。俺も上海の動物園で撮ったことあるけど可愛くなっちゃうんだよね。転がって寝てるだけで人気が出るんだから、簡単でいいよね。


第五回 11月11日
日常写真
日常写真でいちばん怖いなと思ったのは安村(崇)さん。わざわざ夜中にライティングして撮ってるんですよ、昼間撮ればいいじゃん、と思うんだけど、不気味さがハンパないんです。


第六回 11月18日
プリント
(写真を)大きく伸ばすのは自己満足のためじゃなくて、欠点を見つけるため。ここが空きすぎだなあとか、大きく伸ばすと弱点が見えてくるんですよ。


第七回 11月25日
プリント
(暗室で印画紙にプリントするときに)細かく露光テストをとりすぎないほうがいいですよ。思い切ってテストを取らないでプリントしてみるとか。全紙だったりするとハラハラしますよ!


第八回 12月9日
意味
自分でも意味がわからないでやっているのはいいと思うんだよね。理路整然としていてつまらないものってたくさんあるから。


第九回 12月16日
テーマ
ずっと撮り続けるつもりなら、テーマはあんまり決めないほうがいいと想う。そのほうが(作品としては)早くまとまるけど、早くまとまっても意味ないでしょう。


第十回 12月23日
展示の準備
倍とは言わないけど、10枚くらいは多めにあったほうがいいよ。並べてみると違うから。


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金村修の言葉 2019年2期

第一回 7月22日
視点
グリーン車から撮るっていいですよ。庶民の視点からものを見ない。


第二回 7月29日
展示
展示にはコツがあるんですよ。基本はシンメトリー。それをちょっと崩して。できない人もいるんだよ、俺みたいに。でもそれも才能だから。


第三回 8月5日
素材
ダンボールを使うなら、ネオ・ダダの(ロバート・)ラウシェンバーグを見るといいですよ。ダンボールに絵を描いたりしてるんだけど、その貧しさが意味を持ったりしているから。


第四回 8月12日
昔のネガ
昔のネガを見返すと面白いよ。たまーに見返すと「どうしてこれ焼かなかったんだろう」って思うカットがあるんですよ。だからってそれを焼くわけじゃないんだけど。


第五回 8月19日
被写体
デザインされたものを撮るのは難しい。デザインした人にはどうしても勝てないから。


第六回 8月26日
アーティスト
クリストの初期の作品がいいんですよ。「ドラム缶の壁、鉄のカーテン」(1962)なんてパリの路上でゲリラ的に展示してる。昔のアーティストは社会に迷惑をかけるのも仕事だったんです。心を踏みにじるくらいなんでもないですよ。


第七回 9月2日
撮っているのは
そのものを撮るのか、ものから派生するものを撮るのか。撮り方によって変わるわけじゃない? どちらかに振ったほうがいい。何でもかんでも撮るなんて、コマーシャルカメラマンじゃないんだから。


第八回 9月16日
フォーカス
ピントが合ってない写真が入っていたほうがいいこともあるから。


第九回 9月23日
組み合わせ
単純にいい雰囲気の写真ってだけだと、それで終わっちゃうじゃない? 新しい組み合わせを考えると新しい写真になるから。


第十回 9月30日
写真を見る/見せる
写真集は写真を見せるためのものじゃないんですよ。写真を見せたいなら展示。写真は印刷物だから。


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金村修の言葉 2019年1期

第一回 1月7日
「良い」写真
その写真が「良い」「悪い」を判断するのは美学。美学の根拠となるのが政治。最終的には政治に切り込んでいかないと「良い」「悪い」は決められないんですよ。


第二回 1月14日

画面いっぱいにモノが写ってるほうがおもしろいじゃない? 空がなんでつまらないかっていうと粒子しかないから。


第三回 1月21日
個展
個展に作家がいる必要ってそんなにないんですよ。俺がいるのは初日と最終日だけ。


第四回 1月28日
被写体
毎日撮るといいですよ。何でも。同じようなものを撮るようになるかもしれないけど、同じようなものって面白いから。同じようなものでも、なんか撮り方違うなってわかってくるところがいいんですよ。


第五回 2月4日
ピント
俺のピントは無限遠。引けば引くほどうるさくなる。情報量が増えるから。


第六回 2月11日
シャッターを切るとき
写真はこうだって決めて撮るよりも、自分の生理っていうかさ、気持ちよさに忠実じゃないとと続けられないですよ。誰かの真似してもしょうがないしさ。


第七回 2月18日
天気
曇ってるといいこともあるんですよ。全方位から撮れるから。


第八回 2月25日
撮影
「素敵ですね」とか言って撮れば、悪い顔はされないですよ。


第九回 3月4日
動画
映像が自立していないと音楽に負けるんですよ。


第十回 3月11日
編集
知的な人は、あえてどうでもいい写真を入れるんですよ。嫌でしょう、自分が頭がいいってことをひけらかすのは。


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金村修の言葉 2018年4期

第一回 10月15日
プリント
黒すぎるとか白すぎるとか、批判されても気にすることはないんですよ、作家の作品だから。揃ってればいいんです。黒ければ黒く、白ければ白く。


第二回 10月22日
文脈
写真の中で考えるより外から考えたほうがいいんですよ。写真以外の文脈にどうつなげるかとか。「ベッヒャー? 誰ですか。(ドナルド・)ジャッドからの影響です」。


第三回 10月29日
展示
展示で水平を取るのが苦手なんですよ。美術館で展示したとき、80枚貼り直したことがあるんです。たまたま李禹煥がいて曲がってるって言われたから。「李先生、直します!」ってすぐに直しましたよ。


第四回 11月5日
プリント
グレートーンは感情が抜かれている感じがいいですよね。今日やったの俺のプリント黒かったかな……。


第五回 11月19日
発展
写真を見ると、こだわってるものがあるようだから、それを発展させていくことを考えたほうがいいと思いますね。


第六回 11月26日
ためる
写真はこれでいいんじゃないかな。あとはためていくだけですよね。それが大変なんだけど。


第七回 12月3日
写真
なぜ写真なのか? って常に問われているわけですよ。だって絵画は写真が発明されてからずっと問われてきたわけだから。写真だけが、いい写真を撮っていればいいってわけにはいかないでしょう。


第八回 12月10日
スマホ
スマホでいいから撮るんですよ。ちゃんとしたカメラだと構えるじゃないですか。スマホで気になるものをさっと撮るんです。


第九回 12月17日
展示
二度目の展示は、早く決めてさっさとやってしまえばいいんですよ。一回の展示で終わっちゃう人がけっこういるんです。燃え尽きちゃうのと、二度目は必ず評価が下がるから怖いんでしょうね。「前のほうがよかった」「前のほうが荒々しかった」「今度は洗練されすぎだ」。必ずそう言われますから。


第十回 12月24日
写真
クリアな写真と曖昧な写真が両方あるのはいいですよ。写真は悪くないから、後はどう組み合わせるかですよね。

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金村修の言葉 2018年3期

第一回 7月23日
撮り直し
何が写ってるかがわかる。ひっくり返すとわからないけど。わからないようにしたいんだったら撮り直しですよ。


第二回 7月30日
好き
写真そんなに好きじゃなくたっていいんじゃない? 案外写真が好きじゃないほうが出世するよ。写真が好きな人って写真の話しかできないから、世界に行くと弱いよね。


第三回 8月6日
展示前
展示の時は悩むのが当たり前でしょう。ギリギリまで考えるんですよ。


第四回 8月13日
世界
写真にすることで、この不安定な世界を自分の世界にするんですよ。


第五回 8月20日
距離
距離が不自由なほうがいいんじゃないかな。これなんかこれ以上引けないからいいんですよ。


第六回 8月27日
分断
普通は撮ったものと写真が一致するようにするじゃないですか。それが分断されているって言うのかな、そういう状態が面白いんですよ。


第七回 9月3日
縦位置
これ縦にするといいじゃない? 嘘はいけないか。でも一度縦にすると縦にしか見えなくなるけどね。


第八回 9月10日
友達
友達って足を引っ張る存在だから。90パーセント以上。


第九回 9月17日
2回目
いるんだよ2回目の個展でコケる奴って。1回目とぜんぜん違う写真を展示して失敗するんですよ。


第十回 10月1日
個展
展覧会をやるたびに、作者は「作らなきゃ」いけないから。展示が終わったら壊してまた作り直すんだけど。

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金村修の言葉 2018年2期

第一回 4月9日
ストリートスナップ
ストリートスナップって革新的な表現なんですよ。何も考えず撮れるから。対象に興味がなくても撮れるから。


第二回 4月16日
デジタルカメラ
デジカメってあんまりファインダー見る気にならない。それがいいところなんですよ。


第三回 4月23日
被写体
自分が撮ってるものを「いい」っていうのは自分しかいないんですよ。


第四回 4月30日
構図
画面に隙間がない方がいいんですよ。空が広すぎる、画面の中の道路の占める割合が大きすぎるとか、気になるんですよね。


第五回 5月7日
カメラ
カメラに慣れないって重要だと思うんだよね。慣れるといいこともあるんだけと。慣れてるカメラと、慣れていないカメラと、交互に使うといいんですよ。


第六回 5月14日
縦と横
縦構図で撮ろうとするときには主題がはっきりしていないと撮りづらい。中平(卓馬)さんはカメラを横に構えてから縦に構え直してた。構図を壊そうとしていたんでしょうね。


第七回 5月21日
構図
ちゃんと撮るところから始めたほうがいい。ちゃんと撮れてから崩さないと、本当には崩せないから。


第八回 5月28日
迷宮入り
ミステリで最初の10ページで犯人がわかったら、残りの190ページどうするのって思うじゃないですか。これは犯人がわからない写真。迷宮入りですよ。だから良いんです。


第九回 6月4日
情緒
ぽつんとしたものを撮ろうと思いついたとしたら、それを裏切るんですよ。ぽつんとしているだけで情緒的になるから。


第十回 6月11日
展示と写真集
展示をやってみれば自分が何をやりたいかわかるよ。写真集だけだと弱い。並べるだけでできるから。

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金村修の言葉 2018年1期

第一回 1月8日
サイン
写真なんて作者のサインが入ってなければクズだからね。なんの価値もないから。


第二回 1月15日
フレーム
フォルム、光と影。物質性のあるものと、光と影。矛盾するものが同じフレームにあるから面白いんですよ。


第三回 1月22日
言葉
写真は言葉に還元する必要なんかないんですよ。


第四回 1月29日
空間
空間を制する者が写真を制するんですよ。


第五回 2月5日
単語
一枚の写真なんて単語みたいなもんだから。単語なんか並べたってしょうがないじゃない?


第六回 2月12日
67
67で路地の写真を撮るのは難しいんですよ。画面が整理されすぎるから。


第七回 2月19日
順光
順光って暴力的だから。


第八回 2月26日
荒廃
引いてる写真が荒廃しているから、寄ったポップな写真も可愛く見えないんだよ。


第九回 3月5日

夜の写真はちょっと弱いんですよ。昼はイメージに物質性が加わるから強いんです。光だけだとどうしても飽きるんですよ。


第十回 3月12日
ピント
写真家がピントを合わせるのは、興味がありますってところだから。

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金村修の言葉 2017年4期

第一回 10月9日
関係性
親しい関係を撮るなら長島有里枝が参考になる。家族が大好き、家族がいて幸せってことじゃないんですよ。怒ってるんだよね。家族ってなんだろう? っていう。


第二回 10月16日
異質
写真が混沌とするときは視点が動き出す。異質なものが入ると風景が変わって、画面が動き出すんです。


第三回 10月23日
方向
たとえば歩く方向を反対にするだけで写真は変わるから。


第四回 11月6日
芸術
一般の人に批判されたら芸術ですよ。


第五回 11月13日
攪拌
攪拌に疑問を持っていたことがあるんですよ。攪拌する手間があったらその間タバコが吸いたいなぁと。『Spider’s Strategy』はほとんど攪拌してないんじゃないかなあ。


第六回 11月20日
退屈
退屈な街をさらに退屈に見せるっていうのがこの写真の面白さだから。


第七回 11月27日
コンセプチュアルフォト
コンセプチュアル・フォトはいかに苦労しないかだから。


第八回 12月4日
現実の呪縛
写真は現実の呪縛から逃れられないからね。かなりブラしても何が映ってるかわからないから。


第九回 12月11日
グループ展
グループ展で1人だけ本気出すと嫌われるんですよ。和を乱すとか言って。でもその方がいいんです。和なんてクソくらえですよ。


第十回 12月18日
活動時間
夕暮れは情緒的になっちゃうんですよ。写真家はやっぱり朝早く起きないと。

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金村修の言葉 2017年3期

第一回 7月10日
写真家と美術家
外部のことをやってるのが写真家。美術家は外部を内部でいったん消化して出してる。写真家は内部を消化しないで出す人が多い。


第二回 7月17日
見方が変わる
柴田(敏雄)さんが撮ったダム。一度見たら、ダムがああいう風に見えるようになる。ああしか見られなくなるんだよ。


第三回 7月24日
遠近法
遠近法なんて西洋絵画の幻想なんですよ。


第四回 7月31日
次の作品
これをやったら、それを土台にして次に何をやるかを考える。一つ終わって次はまったく違うことをやる、というのは作家のやることじゃないから。


第五回 8月7日
素材
一つの素材にこだわるっていいことですよ。そこから展開できるから。


第六回 8月14日
無意味
写真は基本的に無意味。無意味なことを無意味にやるのは簡単なんですよ。無限に意味を載せられるってことだから。


第七回 8月21日
意味
伊藤高志の『SPACY』がいいのは意味がないからなんですよ。写っているものじゃなくてシステムを問題にしてるんだから。


第八回 8月28日
構造
壊すためにはまず構造がないと壊せない。


第九回 9月11日
複数
アングルをちょっとずつ変えて撮っていくってことは、時間の問題をやてるってことだから。視点を変えるだけなら、そんなに何枚も必要はないんですよ。


第十回 9月25日

これ厳選して3枚だけでって写真じゃないでしょう? 量ですよ。量は質を決定するってよく言うじゃないですか。

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金村修の言葉 2017年2期

第一回 4月10日
作品づくり
写真はいいですよね。通勤時間に撮ってるだけで作品になるんだから。作品づくりに専念するとか言って会社辞めたりする人もいますけど、そういう人はだいたい続かないんですよ。写真なんて簡単なんだから。どうして難しく考えるんだろう。


第二回 4月24日

いい写真家は墓を撮るんですよ。ウォーカー・エヴァンスしかり。墓を撮らずして何が写真家か!でも俺は撮ったことないんですけどね。難しいんですよ。


第三回 5月1日
写真の並び
意味としてはつながってこないんだけど、画面でつながる。写真って自由でいいなあ。


第四回 5月8日
写真と感情
感情が先行してる写真ってつまんないじゃないですか。最初から主人公が泣いてる映画なんて。


第五回 5月15日
場所
映画と写真って似てるんですよ。場所が面白ければ面白くなるところとか。


第六回 5月22日
水平
デジタルになって、カメラに水準器が入っているから水平取れてる写真が増えた。でも、きれいに撮ろうとすると構えるし、動きがなくなる。


第七回 5月29日
完成
完成するのは作家が死ぬときだよ。


第八回 6月5日
ドゥルーズ
ドゥルーズが言ってたけど、フレームがあるから現実がある。


第九回 6月12日
システム
思想がシステムを生み出しているんじゃないんだ。システムが思想を生み出しているんだ。


第十回 6月19日
1枚
あんまり1枚にこだわらないことですよ。写真は絵と違って連続性を持っているから。

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